鳥もと 移転 荻窪駅北口の明かりが消えた
幼い頃、「動物園に行こう」とオヤジに連れられて吉祥寺の焼き鳥屋 いせや によく行っておりました。
なぜ動物園が焼き鳥屋なのか。
井の頭公園内の動物園に向かう途中に焼き鳥屋のいせやがあったから。
最初のうちはホントに井の頭公園に行って動物をみたりしていましたが、いつしか いせや が目的地に。
動物園=いせや。留守番の母を除く家族の符丁です。
昭和40年代の終わり頃から50年にかけての頃です。
もちろん平日のいせやは知りません。
オヤジに連れられていくのは毎週日曜日の昼前。
子供心にも日曜日の昼間の いせや は凄かった。
客の多くは労働者。口も気も荒い。にこやかに飲んでいると思ったら急にケンカになったりする困った人が.....って、ウチのオヤジが嗾けてたのですが。
店内の立ち飲みカウンターはお客でいっぱい。入りきれない酔っぱらいが前の道を占拠してコップ酒をガンガン飲んでいました。
昼からオトナたちが路上でヘロヘロになってる素晴らしい場所でした。
オヤジは酒に飲まれる困ったタイプ。
泥酔するまで飲んだ挙げ句に、絡む、暴れる、と、やりたい放題。ご近所にも散々迷惑をかけた要注意人物でありました。
当然、飲みに行こうとすると母とケンカになるワケです。
そんなオヤジが思い立ったのが井の頭公園の帰りに いせや に寄ること。動物園に連れて行くという口実で昼前にウチを出るのです。
子供をダシに使ってまで飲もうという意地汚い酒飲み根性。
もちろんワタシにも遺伝しているはずです。
日頃からカラダに良いもの食材や、酒質の良い酒しか口にしないワタシではありますが、たまにジャンクな店に無性に行きたくなるのはそんな幼少期の原風景を持っているからかもしれません。
ジャンク=楽しい。 ワタシの脳内ではこう訳されています。
中央線沿線にはそんなコップ酒を飲ませる焼鳥屋が各駅にありまして....。
西荻窪なら戎。荻窪なら鳥もと。高円寺なら大将。なんて感じ。
いつも変わらない風景がそこにありました。
そんな焼鳥屋の1つ。
荻窪駅前ロータリーの 鳥もと 。
荻窪駅北口の整備事業の為、この8月で明かりが消えました。
ずーっとそこにある風景だと思っていたので写真はほとんどありません。
春頃かな。珍来が閉まっているので水曜日かも。
この鳥もと、荻窪在住だった井伏鱒二氏が足繁く通っていた店だそう。
この写真だとワタシの背中の方にあるカウンターの端が氏のいつもの席だったそうです。
この場所には他に 珍来 という深夜までやってる中華もあって、帰宅時に 鳥もと と 珍来 の明かりが見えるとホッとしたのは確か。何ともいえない風情があったのです。
鳥もとも珍来も戦後の復興期のどさくさで始めた商売だったらしく、この場所に法的な根拠がなかったと聞いたりしています。
こんな場所がちょっと残ってても良いような気もしますが、バスのターミナルとしての荻窪駅の利便性が向上するなら仕方ないとも思います。
ワタシは『なあなあ』『まあまあ』って日本の素晴らしい文化だと思っています。
他の国の人が持っていない素晴らしい文化。
日本人同士だけで感じるテレパシー。
根拠が曖昧な市場とか店とかって今までは、『なあなあ』『まあまあ』で何となく残っていたのでしょう。
この場所の明かりが無くなってなんだか味気ない駅前。
なんとなく寂しい風景です。
この鳥もと、少し場所が変わりましたが2店舗体制で営業しています。
でも、駅前に有ってこその店でした。
ワタシの好きな『なあなあ』『まあまあ』が1つ駅前から消えました。
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