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2009/12/07

ノドグロに寒ブリ 訪問者を唸らせる旬の味

先週末、野暮用があり新潟へ行ってまいりました。

早朝に出社して段取りつけてから東京駅へ。いつものように慌ただしく移動です。

市内では夕方から冷たい雨。
寒さを忘れるくらい一日中動いて、最後に腹ぺこで辿り着いたのは古町のはずれの小さな寿司屋でした。





P1340775


新潟は海鮮系の寿司ばかりと思っておりました。

この店は江戸前。
時期も時期なので寒ブリやノドグロなどの地魚にどんな仕事がされるのでしょうか。興味津々です。


もっともマグロは築地から。ウニは北海道から。
この地で上がらないネタは高く買う築地や鮮度の高い産地から運ばれてくるのは自然です。
江戸前の寿司屋が新潟にあっても不思議ではない気もします。


L形のカウンターは8席。
小上がりのテーブルが4席。
程よい店です。

「酒を人肌で」と、言いながらネタケースを見ます。
種類は多くないけど丁寧に分けられたネタに期待が膨らみます。

お通しの煮こごりをつつきながら、酒を飲みながら、タイミングをはかります。


ところがなかなか声がかからない。

しばらく見ていると、小上がりのお客に集中的に握り、そのお客が終わるとワタシたち以外のカウンター席3組に集中的に握ります。

大将の手がちょっと落ち着いたところで「美味しいところを少し切ってもらえますか?」と言ったら、大将「ちょっとお待ち下さいね」と言ったきり。結局、ワタシたちは1時間ほど放置されることになりました。


握り始めたら終いまで一気に握りたいのでしょう。
しかし、とても不器用なやり方です。

ワタシが主ならお客が酒を注文したところで美味しいところを切る位はします。


お通しだけで酒2合。
何もつまむものが無くなっても手持ち無沙汰なので飲むしかありません。

このあと何もない状態でさらに3合飲むことになったワタシ。

しかも酒は八海山や〆張鶴などなど。時間がどこかで止まったかのよう。

正直、この店に来た事を後悔しかけましたが、この日この店に居合わせた他のお客さんが皆さん楽しい方々。
不器用な店で絶望的な時間を過ごしていたワタシたちですが、皆さんとのおしゃべりが楽しくとても救われました。



3組のお客が終わり、いよいよワタシたちの番になりました。

「美味しいところ切りましょうか?」と大将。

ワタシが1時間前に頼んでいたこと覚えていたようです。


「もう結構。握って下さい」

お通しの煮こごりだけで5合飲んだのです。
ワタシの気持ちを察して下さい。


「今日は旨いカニがあるんですよ。」

そう言われては頼まない訳にも行きますまい。

お人好しがワタシの取り柄。
ついでにお銚子をもう1本。


しかし、これはやはり余計でした。

テーブル席に入れ替わりで入ったお客さん。
このお客さんたちなど酒も飲まずに30分以上放置されていたのですが....、当然こちらのお客さんに握り初めます。
まぁ、ワタシたちには1杯のカニがありますが、更に30分以上待つ事になります。
2軒目の予定はキャンセルになりました。

この大将、なかなか饒舌で江戸前の鮨について浪々と講釈してくれます。人は悪くないのですが少々ご自分のアピールが過ぎます。



ワタシにとっての寿司屋の原点は代沢の小笹寿し。
生意気だった20代の頃に月1回ペースで通っていた事があります。
この店の主だった岡田周三氏も饒舌でした。
しかし、自身のアピールではなく小言が多かった。
無粋を見逃せない頑固な人だったんですよね。
オトナとしての作法を知らなかったワタシ。
行く度にお小言を貰い、中でも3度は厳しく叱られて、それでもビビりながらも道場に行くつもりで通っておりました。
(ワタシが連れていった女子がオヤジさんのストライクゾーンだったときは妙に優しくなったりもするのですが....)
カウンターの常連さんたちは馴れたもんで「オヤジ、またやってんな。」なんて感じ。
お客も『遊び』を通り過ぎた達人たちばかり。若いワタシの泣きそうな顔を見て静かに微笑んだりしておりました。
そんなオトナたちのすることを真似てみたり....。
いつも静かに愉しんでいた小沢昭一氏の所作に憧れたりして....。
小笹には生意気な小僧がオトナになる為に必要なことの全てがありました。
鮨屋のカウンターに座るとそんなことを思い出してしまうのです。



さて、いよいよ握りです。

大将の講釈にワタシたちが気を使って相づちを打ったりしながら、どんどん握られる寿司を頬張ります。

しまいには番長が食べている最中に次の握りが出てくる忙しなさ。
椀子ソバ状態であくせく。

人は悪くないのでしょうが、いささかエゴイスティックな大将。

それでも握られる寿司は旨いから困ります。

握り(おまかせ×2人前)。
毛ガニ×1杯。
ビール1本。
お銚子6合(700円×6)。

〆て2万5千円。
勘定も江戸前です。


因に、隣に座っていた同伴カップルは....

握り(同じおまかせ×2人前)
毛ガニ×2杯
お銚子3合+α。

ワタシたちより毛ガニが1杯多くて1万5千円!?

更にテーブル席に座った握りのみのお客さんの払いは(同じおまかせ×2人前)で数千円。

東京からの客は割り増し料金らしいです。



さて、この店行って良かったか?とアナタに問われたなら「それでも行って良かった」と答えます。

地のネタの良さは何よりも説得力があります。
皮を炙ったノドグロ、板昆布が乗せられた寒ブリ、とびっきり旨かったのです。
コレだけで充分。
納得の美味しさでした。

新潟の農水産物の説得力はスゴイ。
市中の寿司屋が少々乱暴に浪費してもまだ余り有るのです。
地の魚が枯渇しないかぎりこの地の飲食店は安泰です。

しかし、旅先では必ず良い人ぶるワタシ。
呆れながらも付き合ってくれるお食事番長はホントに器が大きいです。

ワタシが浪費しても余り有る番長の慈悲。
見放されないかぎりワタシも安泰な気がします。

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お食事遠征 #04. 甲信越」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。ワタシもすれ違いで新潟でした。ホントに偶然ですね。
やはり越後湯沢で寿司屋に入ったんですが、感激するくらい美味しかったです。山側の土地でもあんなにウマイなら、海沿いだったら…。
ノドグロや南蛮海老、すごくテンションが上がりました。

投稿: inwine | 2009/12/09 11:27

inwineさん、新潟の店ってよく「海有り県だから」なんて言うじゃないですか。でも新潟県の山奥でも寿司は美味しいですよね。海側の人が思っているほどのアドバンテージは既に消失しています。日本の流通ってホントに優秀です。
長野や群馬でも新潟の人が思うよりズーッと美味しい魚が味わえます。足がはやい小魚、白魚とかゲンゲとか以外は海側山側に大差はありません。仕入れと流通へ支払うコスト次第です。
新潟の人って周辺市町村の実りや収穫に少々あぐらをかきすぎているような気がします。
少し大切に新潟のブランドイメージを使って、後世に多く渡すべきだと思います。
例えば、新潟の地酒はそのブランド力を使い切ってしまいました。
水産物も富山や石川や京都ほどじゃないなって言われてからじゃ手遅れです。
越後湯沢の寿司も新潟市内の寿司もネタの美味しさは同じです。
土地の米を土地の水で炊けるぶん、越後湯沢の方が美味しくても驚きません。

投稿: bleu et rouge | 2009/12/09 14:18

今回も、最後の一文まで、引き込まれるように読んでしまいました。
そして、そんな仕打ちを受けつつも板さんを評価し、さらには気持ちよく付き合ってくれたお料理番町さんにも感謝する。
これがあってこその「日々のハッピー」だと思います。やっぱりBleuさんはバランス感覚がすばらしい!

投稿: すみの | 2009/12/10 16:45

すみのさん、最後までお付き合い頂きありがとうございます。ただ垂れ流しただけの駄文ゆえ恐縮してしまいます。
この寿司屋さんには跡継ぎさんがいて二番手として大将を支えているのですが、この息子さんの清潔感がなかなか良いのです。タヌキな大将と並ぶとコントラストが際立ちます。
高潔なままオヤジのような逞しさを持つことが出来るのか。毎年通って見ていきたいような気にもなっています。

投稿: bleu et rouge | 2009/12/11 02:32

私も京都の丹後「伊根」で同じ経験があるんです。
10年程前に行った時には2時間延々と待たされました。しかし待っていただいたお寿司の味が忘れられなく、再び行ってきたんです。いや~驚きました。「自家製サバのへしこ」は超がつく絶品です。そして湯川尚子さんのご友人「向井酒造」さんのすぐ近くです。ぜひ京都の丹後伊根へお出かけ下さい。
お寿司屋さんを行ったブログはこちらです。
【http://blog.livedoor.jp/nonko0127/archives/55276173.html】

投稿: nonko | 2009/12/16 09:54

すみません、伊根はこちらのブログでした(@_@;)
【http://blog.livedoor.jp/nonko0127/archives/55276553.html】

投稿: nonko | 2009/12/16 09:55

nonkoさんのblogを見るたびに行きたいところが増えてしまいます。
伊根には興味津々です。行ってみたいですね。
いろいろ教えて下さい。

投稿: bleu et rouge | 2009/12/16 19:57

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